大腿骨頸部・転子部骨折後の手術方法の特徴が知りたい
術後の評価項目が知りたい
おおまかに治療プログラムが知りたい
そんな方のために、手術方法の主な6つの分類とその特徴、加えて術後の理学療法評価項目とおおまかな治療プログラムについて紹介しています。
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Contents
手術方法の主な6つの分類とそれぞれの特徴
①Compression hip screw (CHS)法
②ガンマ釘固定gamma locking nail(γ-nail)法
③CHS+CCS(compression hip screw+cannulated cancellous screw)法
④髄内釘固定法(Ender法)
⑤ハンソンピンシステム
⑥人工股関節全置換術total hip arthroplasty(THA)・人工骨頭置換術bipolar hip arthroplasty(BHA)
①Compression hip screw (CHS)法
【特徴】
“CHS法は手術侵襲が少なく、術後骨折部により大きな圧迫力を必要とする場合、出血量がγ-nail法よりも少ないため、全身状態が悪い例ではγ-nail法ではなく、CHS法が適応となる。”1)
②ガンマ釘固定gamma locking nail(γ-nail)法
【特徴】
“γ-nail法は髄内に荷重軸があり、強固な固定力と生体力学的優位性により早期離床・早期荷重歩行可能で、閉鎖的主義により良好な骨癒合をもたらす。
不安定型骨折においても安定した固定性が得られる。”1)
③CHS+CCS(compression hip screw+cannulated cancellous screw)法
【特徴】
“CHSにCCSを加えることで骨頭の回旋を抑えることが可能となる。”1)
骨頭に刺入されるピンが2本になることで骨頭が回旋しにくくなります。
④髄内釘固定法(Ender法)
【特徴】
“CHS法、γ-nail法と比べて手術展開せずに骨折整復ができ、侵襲が少ない手術方法である。
Ender釘を大腿骨顆上内外側から大転子に向けて2〜5本刺入することによって骨髄の温存かつ骨頭部の骨膜の温存も図れることにより仮骨形成は豊富となり、骨癒合が良い。
だが、Ender釘整復は技術的に習熟を要し、X線透視下で骨軸方向の確認が必要となる。”1)
⑤ハンソンピンシステム
【特徴】
“手術手技が容易であり、皮切が小さく、出血量が少ない。
手術時間が短く手術後疼痛の訴えが少ないのが特徴である。
この手術も骨髄・骨膜の温存が図られ骨癒合に適しているが、早期荷重・歩行には適さない。”1)
⑥人工股関節全置換術total hip arthroplasty(THA)・人工骨頭置換術bipolar hip arthroplasty(BHA)
【特徴】
“人工骨頭・人工股関節全置換術に分けられるが、選択は骨折の転位度(大腿骨頭の栄養血管の有無)、患者の骨密度、活動性(全身状態、ADL能力)、慢性疾患(変形性疾患)の状態により選択する。”1)
参考・引用文献
1)石永善和,嶋田智明・他:大腿骨頸部骨折 何を考え、どう対処するか,株式会社文光堂,東京,p15-17,2009
理学療法評価項目
大腿骨頸部・転子部骨折術後の理学療法評価項目は以下の通りです。
・問診
・視診・触診
・痛みの評価(夜間痛、安静時痛、運動時痛、荷重時痛)
・形態測定(転子下長・棘下長・大腿周径、下腿周径等)
・関節可動域テスト(股関節のみでなく、膝関節・足関節も含む)
・徒手筋力テスト(股関節周囲筋、大腿筋群)
・病棟内・自宅でのADL評価(トイレ、移乗、入浴、整容、更衣、移動能力、BI・FIM等)
・パフォーマンステスト・バランス能力テスト(歩行能力評価、10m歩行テスト、TUG、BBS等)
・認知機能評価(HDS -R、MMSE等)
・臥位姿勢の評価(股関節外旋位ではないか、腓骨神経麻痺リスク)
・姿勢評価(骨盤、脊柱のアライメント)
・褥瘡の有無
・深部静脈血栓症の有無
・バランス能力評価(静的・動的バランス評価)
・パフォーマンステスト(歩行能力評価、10m歩行テスト、TUG等)
それぞれについて解説していきます。
問診(情報収集すべきポイント)
・受傷機転は転倒か
・転倒歴(反対側の大腿骨頚部骨折、脊椎圧迫骨折等)
・転倒前のADL(ゴール設定の参考になる)
・本人・家族の希望( 〃 )
・受傷時の単純X線の確認(骨折不安定型か)
・術後の単純X線の評価(術式・アライメントの確認 *下記記事参照
・手術方法の確認(医師からの情報確認)
・リスクの確認(現病歴、既往歴からリスクを把握する。再骨折、心疾患、脳血管疾患、神経疾患、変形性疾患、認知症、糖尿病、人工関節の有無等)
・投薬状況(骨粗鬆症薬、めまい、ふらつき、不眠、低血圧等の症状の有無)
・自宅周囲の環境(住環境評価)
・同居家族(主介護者の確認)
・介護保険(身体障害者手帳の有無、要介護度の確認)
*X線のみかたは下記記事を参照してください。
主な問診項目を挙げましたが、これら以外にも患者さんの状態に合わせて、必要な項目は変化します。
あくまで参考にどうぞ。
視診・触診
手術直後は術創がガーゼ等で覆われており、直接確認することはできないが、主治医がガーゼ交換を行う際等に確認したり、看護師に聞いたりして、術創周囲の発赤、腫脹の程度を確認しておく。
ガーゼ等が除去されれば、腫脹や熱感といった炎症症状、術創の癒着の有無等を確認する。
痛みの評価(夜間痛、安静時痛、運動時痛、荷重時痛)
痛みの部位やどうした時に痛いかなどと同時に消炎鎮痛剤の使用状況や種類、使用した時間も把握しておく。
鎮痛効果が高い時間にリハビリを行うのも円滑に進めるための手段である。
評価方法にはVASやNRSなどがある。
形態測定(転子下長・棘下長・大腿周径、下腿周径等)
周径や脚長、アライメントを確認する。
周径では、患肢は腫脹・浮腫のため増大することが多いため、左右で比較する。
炎症経過の指標ともなる。
脚長では不安定型の転子部骨折で整復が困難な例では1~2cm短縮するケースもある。
*ベッド上では骨盤が沈み込むなどして正確な評価がしづらいのでその点に注意し、骨盤や脊柱の位置にも注意する。
関節可動域テスト(股関節のみでなく、膝関節・足関節も含む)
状況により、他動・自動介助・自動を適宜選択して測定する。
股関節以外の下肢関節についてもスクリーニング程度に確認しておく。
手術方法によっては大腿筋の痛みにより膝関節のROM制限が見られることもある。
・脱臼肢位
・癒合していない骨折部にストレスをかける運動方向
・腱・靱帯・筋・関節包・皮膚などの手術直後
→骨折後急性期の場合は、疼痛や再転位の危険性を考慮しつつ愛護的に行う。
徒手筋力テスト(股関節周囲筋、大腿筋群)
健側下肢や上肢については通常通りブレイクテストで実施可能。
術直後の患側下肢については、セッティングでの筋収縮の有無や複合的な動きを毎日比較することで筋力の変化を捉えることができる。
例)
ベッド上で踵を滑らせての患肢の屈曲・伸展ができるか
SLRはできるか
膝を屈曲した位置から踵をベッドから離せるか
ブリッジはできるか、など
病棟内・自宅でのADL評価(トイレ、移乗、入浴、整容、更衣、移動能力、BI・FIM等)
心身機能の状態を踏まえてADL能力の程度を評価する。
看護師からの情報提供や自身での情報収集により、状態の変化を捉える。
退院後の住環境を踏まえた能力の評価も必要である。
代表的なADL評価にはBarthel index(BI)やFunctional Independence Measure(FIM)がある。
BIは「できるADL」、FIMは「しているADL」を表すとされている。
パフォーマンステスト・バランス能力テスト(歩行能力評価、10m歩行テスト、TUG、BBS等)
歩行能力や転倒リスクの指標として10m歩行テスト、TUGといった評価を用いる。
また、バランス能力という観点ではBerg balance scale(BBS)も有用である。
時間を計測することで客観的に変化を捉えることができる。
認知機能評価(HDS -R、MMSE等)
認知症の有無は歩行自立の予後を決定する因子となり得るので、予後予測をする上でも重要な情報である。
認知機能低下が疑われる場合はHDS -R、MMSEなどの評価を行う必要がある。
臥位姿勢の評価(股関節外旋位ではないか、腓骨神経麻痺リスク)
術後ベッド上の臥位姿勢の確認はリスク管理上必要である。
長時間股関節外旋位でいると、腓骨頭下を走行する腓骨神経が圧迫され、神経麻痺を呈することがあるためである。
姿勢評価(骨盤、脊柱のアライメント、座位・立位姿勢)
静的なアライメントを評価することで、動的評価の指標ともなります。
褥瘡の有無
術後の活動性が高ければあまり問題にはならないが、長時間の臥床により褥瘡のリスクがある。
褥瘡は同一部位の持続的な圧迫により生じる。骨突出部は特に生じやすいため、発赤等に注意する。
深部静脈血栓症(DVT)の有無
大腿骨頸部骨折術後患者の27%にDVTが生じる2)と言われているため、術後リスク管理でも重要である。
血液検査所見ではD-dimerが重要な情報となる。
また徒手検査としては
Homans徴候(膝屈曲位で足関節背屈により下腿三頭筋部に疼痛+)や
Lowenberg徴候(下腿部をマンシェットで圧迫すると150mmHg以下で下腿に疼痛+)、
Pratt’s徴候(腓腹筋を掴むと疼痛+)がある。
以上が理学療法評価の項目と説明でした。
あくまで一般的に必要とされる評価項目であるため、その患者さんに応じて必要な評価は変化します。
状態に合わせて取捨選択が必要ですが、参考にはなると思います。
理学療法プログラム
大腿骨頸部骨折の急性期理学療法の目的と主なプログラム
急性期における理学療法の主な目的はつぎの7つです。
1)疼痛緩和
2)受傷側の関節可動域の拡大と筋力の維持増強
3)非受傷側と上肢の機能維持
4)呼吸循環機能の維持
5)身辺動作の自立
6)安全な立位と歩行
7)精神・心理面の援助
上記の目標を基に治療をしてきます。
治療プログラムは大まかに分類すると次の5つです。
1)物理療法:寒冷療法と温熱療法の選択と的確な使用、電気治療の検討
2)関節可動域拡大:他動運動、自動介助運動、自動運動の選択と端座位の獲得
3)筋力の維持と増強:疼痛誘発の注意と起居動作の獲得へ向けての支援
4)立位・歩行練習:平行棒・歩行器・T字杖の的確な選択と介助方法の検討
5)起居動作練習:端座位の獲得から日常生活活動の充実へ向けての支援
これらを参考にしながら今の患者さんに何が必要かを考え、プログラムを立案しましょう。
参考・引用文献
2)出口仁,嶋田智明・他:大腿骨頸部骨折 何を考え、どう対処するか,株式会社文光堂,東京,p29,2009
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まとめ
いかがでしたか?
大腿骨頸部・転子部骨折術後の理学療法として術式の特徴や評価項目やおおまかな治療プログラムについて紹介しました。
これらは担当ケースによって変化する部分ではありますが、おおまかに把握しておくことで自分の中の指標になると思います。
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